Los Altos に焼き鳥屋さんが開店するという話を聞いてから、ほんとうにずっと心待ちにしていた。
炭家と書いて SUMIKA と読ませる。住処にかけているのだろうけれど、私はスピカという春の星の名前を思い出す。その SUMIKA がとうとう開店した。早速、妻の誕生祝いを兼ねてお邪魔させていただいた。
往きの車の中で、「何を食べようかなー」と私。「モモと、ネギマと、ぽんじり、そしてトマトのベーコン巻き!」喜久美さんが、なさそうなものばっかり言わないの!と怒る。「なさそうって、ベーコントマト以外は標準じゃない?でもベーコントマト、欲しいなー。これってほんとうに美味しいんだよ。確かにこれはあまり見ないけれど、ぜひ置いて欲しいとお願いしよう。」そんな風にわいわい言いながら到着。
店に到着。入ってみるときれいな落ち着いた店内。ネタの見えるカウンターの特等席に通していただいた。並べてあるネタをふと見ると、ななんと、プチトマトのベーコン巻きがある!嬉しい!これ、絶対に注文しようね。
座ると、まず暖かいおしぼりを少し広げながら手渡しで渡してくれる。これでもう気持ちは日本にトリップ。そしてウェイターさんがこちらの目線より低くなるようにひざまずいて注文を取る。丁寧なサービスに驚く。
お酒をお願いする。八海山。日本酒の揃えは多いけれど銘柄はこの辺りの普通。どこに行っても同じようなものがあるのは、限られたものしか輸入されていないからかな。梅酒がチョーヤなのは嬉しかった。他のは梅酒風に合成した風味のない酒が多いから。それと、チューハイがある!今度はチューハイをお願いしてみよう!(梅酒風、なんて言っておきながらこれだ)。喜久美さんと桜子はほうじ茶。
さて、主役の焼き鳥は、モモ、レバ、ハツ、手羽、つくね、トマトのベーコン巻き、アスパラのベーコン巻き、それからエノキの肉巻き?(これだけ肉の色が違った)。メニューにはあと、ステーキ、タン、シシトウなどがあったけれど、まだこれらは揃っていないとのこと。ネギマは、まだネギのいいのが見つからなくて、とシェフの丸山さん。確かにこちらでは太ネギのいいのはなかなかない。満足できるネギが見つからないから出していないというのは頼もしい。
手始めにモモ、レバを塩で、つくねをタレで、そしてトマトのベーコン巻きを注文。
焼き鳥以外にもいろいろある。メニューはまだ英語のものしかなかったので、英語の表記からどんな食べ物か想像をする。これがちょっと楽しめた。まず Daikon Stew。これはふろふき大根。それでは Deep Fried Daikon は? これは揚げ出し大根。揚げ出し豆腐の大根版。早速注文。Roasted rice ball は焼きおにぎり。では Roasted rice ball risotto はなんだ? リゾット? と考えてしまっては負け。これはおにぎり茶漬け。でもお茶ではなくて鶏スープの茶漬け。ああ、これも食べたかった。が、ご飯物は親子丼に決定。丸山さんの一番のおすすめだったから。ふつーの物を美味しく作るのが一番難しいのだと思う。
オーナーのくにこさんが、サラダがおいしいのよ、と言っておられたが、それは次の楽しみに。
八海山をちびりちびりしていると、最初に大根が来る。大根を揚げたというから、キツネ色を想像していたのだけれど、ふろふき大根にもっと透明感を足したような美人。白髪葱と三つ葉が上に乗っている。出汁のいい香り。いただいてみるとコクがあって美味しい!初めての味。ふろふき大根と見かけは似ているけれど、風味は全然違う。ブリ大根とか、鳥の皮と煮るとか、確かに大根は油と相性がいい。それを上品に突き詰めるとこうなるのか。
出汁の味がよいので、焼き鳥だけではなくて和食系も楽しみにできる。
そして焼き鳥が来た。まずレバ。これは旨い。そしてモモ、いいねえ。つくねはしその香りが美味。トマトのベーコン巻き。焼かれた甘いトマトがプチっと口の中ではじける。それがベーコンの油や塩味と混じって、うー、旨い。手羽先にしゃぶりつく。これは幸せ。鶏はすべて、オーガニックの放し飼いのものだそうだ。ハッピーに生きた鶏だね。
そして最後、親子丼を3人で分けて食べる。小口に切った鶏に程よい半熟具合の卵。そして口に入れると、炭焼きの焼き鳥の香ばしい香りが口の中いっぱいに広がる。旨い!この味は初めて。親子丼はありふれた食べ物だけに期待値が高くて、かなり美味しくて普通。なので、後に印象に残るくらいの美味しさというのはなかなかお目にかからない。SUMIKA の親子丼は印象に残る。欲を言うとご飯がもちっとふわふわだといいけれど。それでも美味しいよお。ぜひお昼をやってください!
おなかがいっぱいになったので、デザートは抜き(でもサチュラ特製ケーキもあるそうだよ)。でもこれだけ日本の味に浸ったら、洋食の習慣のデザートは蛇足のような気もする。イチジクのフライというメニューがあったから、こういうのをほんの一口、いただくのは良いかもしれない。
あ、書いていて、メニューにあったアサリの赤出汁をいただこうと思っていて忘れたのを思い出した。なんだか悔しい。次にお邪魔したおりにはかならずやこれを。
いやーそれにしても旨かった。アメリカだから、じゃなくて日本の水準で旨かった。そして日本の丁寧なサービス。味も、サービスも、ぜひそのままでいてほしい。